紙切れ投擲機構

猫とコミュニケーションをとれるようになってきて嬉しい。
名前を呼べば反応するし、向こうも私を呼ぶように鳴く。

かつては私のことを人と思っていないような、もはや掃除機に対して見せる警戒と同様の態度で接せられることもあったが、もうだいぶ人対猫のやりとりが成り立っていると感じる。

猫は細長いものが好きで、最近は封筒の端を切ったような紙切れを気に入っている。これはただの紙なので、もちろん勝手に動いたりはしない。だから我々人間が拾ってポイと放り投げると、お気に入りアイテムが動きを与えられた様子に猫は大興奮し、夢中で捕まえにいく。

猫としてもこのシステムを学習したようなのだ。私があぐらをかきながらぼんやりとテレビを見ていると、猫は私の左膝あたりに紙切れを置き「投げてください」という感じでたたずむ。このとき猫は決して「投げろ」といった横柄な態度をとらず、「よかったら投げてくれませんか?」と謙虚な表情で待っている。これがコミュニケーションとして健全に感じ、快い。

おお、猫からのリクエストだ、と感動しつつ紙切れを投げると、猫は直ちに飛びつき、再び持ってくる。その繰り返しを何分間か続けると、猫は満足してどこかへ行く。役目を終えた私は少し姿勢を崩し、再びテレビを見る。

家に猫がいるなあ、と思う。

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