セロリの料金システム

スーパーを物色していたら次のようなものを見つけた。

セロリの値段に注目してほしい。
セロリ1本 78円
セロリ2本 198円
皆さんはどう思うだろうか。私は、2本の方が割高だなと思った。1本が78円なら2本ではその倍の156円、あるいはちょっとお得な150円ぐらいになるのが妥当だろう。かなり意表を突かれているので慎重に語ったが、2本でいきなり198円になるのは明らかにおかしいと思う。なんでこんなことになっているのだろうか。そもそもセロリが本数ごとに値段が分かれて表示されていることもちょっとおかしい。店員に訊いてみようと思ったが、よく使うスーパーなので変な印象を持たれると今後の生活に影響が出ると考えて我慢した。よって個人的に推理する。この記事を最後まで読んだところで、あなたも私も真相を知ることはない。

まず、このセロリ料金システムが異常であるかどうかを確認する。Googleで「セロリ 多く買うと高い」「セロリ 希少」「セロリ 個数制限」などと検索してみたが、やはり1本買うより2本買う方が高くなることと関連するような情報は見つからなかった。むしろセロリの大量消費レシピなどが表示されるほどだったので、この料金システムは異常だと考えていいだろう。

セロリが割高になることに対して、消費者として嬉しい点は無い。つまり割高のセロリは買いづらいというわけだ。これが店側の目的だと考えるのはどうだろう。たとえば現在世の中では新型のアレの流行に伴い、トイレットペーパーの入手が困難になるという情報が流布され、買い占めが起こるなどの混乱が生じている。これと同様の状態がセロリ界隈にも生じているのではないか。つまり、セロリを買い占めたい人々に対して、多く買った場合割高になる料金システムを提示することで抑止力をはたらかせるというわけだ。この予想に基づき「セロリ 買い占め」等で検索してみたが、そのようなムーブメントは起こっていなかった。

しかし、この予想を立てたことによって、ふと「このセロリを3本買ったら何円になるのだろうか」という考えが浮かんだ。これは真相に辿りつくための数理的プロセスとして非常に有効だと思う。というのも、3本買った場合の値段を知ることで値段の変化のパターンを複数知ることができ(1本→2本、2本→3本、1本→3本の値段の上がり方)、それらを比較することで傾向や規則性を考察できるからだ。ただ、これを実行するにあたって大きな問題がある。それは私がセロリを3本も求めていないということだ。セロリの品薄が警鍾されても私は全く焦らない。セロリを買いたい気持ちがないのだ。したがって、この謎の料金システムの真相に近づく手段であるとしても、満足に食べきるビジョンが見えないからには容易にセロリを3本も買うことはできない。これを読んだあなたが同様の料金システムで販売されているセロリを発見した場合、金銭的および食生活的に問題が無ければぜひ3本買ってみてほしい。そしてその場合の値段を教えてほしい。教えていただければその情報は有意義に使わせていただきます。

などと呼びかけたところで、よほどのセロリ好きでなければ一度に3本も買うことはないだろう。やはり私自身が覚悟を決めて3本買うべきか……。待てよ、私がここまで購入をためらうということは、同様にセロリの購入をためらう人々が多くいるのではないだろうか。「ももち」こと嗣永桃子さんが率いていたカントリーガールズにおいても、お菓子禁止令を違反した場合の罰則として「セロリを食べること」が用意され、たびたび執行されていた。罰になるほどのポテンシャルを持つセロリは、もしかしたら想像以上に売れ行きが良くないのかもしれない。買い占めどころの問題ではなかった。真逆だ。

つまり、スーパーとしては「多く買うと高くなる」ことではなく「少なく買うと安い」ということを主張したかったのではないだろうか。セロリを積極的に買いたい気持ちが無い層に対して、「セロリなんて好んで食べないけどねえ……。ん? 2本買うと高いけど、1本だけなら割安になるのか。買ってみよう」と思わせる作戦なのではないだろうか。そう考えると私もセロリを買いたくなってきた。しかしこの場合、1本だけでは満足できないセロリ好きが困惑することには変わりない。でももしかしたらこのスーパーではこれまで同時に2本以上のセロリが売れたことがなく、その経験に基づいた決断なのかもしれない。ビジネスというものには時に消費者の想像を遥かに超える戦略が仕組まれていることを私はテレ東の番組から学んでいる。この不思議なセロリの料金システムにも、きっと膝を打たされる理屈があるのだろう。

いや、そんな立派な理屈はないかもしれない。普通になんかのミスかもしれない。

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