中学生の時、町に初めてドライブスルー付きのマクドナルドが出来た。
単純なマクドナルドの店舗はすでに存在していたが、ドライブスルーがあるというのは私をかなりわくわくさせた。
しかし、当時中学生の私には自動車を運転する権利がなかったため、仕方なく自転車でドライブスルーを利用しようと考えた。
この試みを友達に提案したところ、関野くんが同行してくれた。
放課後、マクドナルドに集まり、ためらわずドライブスルーレーンに進んだ。
たしか前に一台車がいて、それを待った記憶がある。
やがて我々の順番になり、注文をしようとすると、スピーカー越しに「少々お待ちください」と言われた。
不穏な気持ちで待っていたら、店の自動ドアから偉そうな格好の女性店員が出てきた。
マクドナルドの偉そうな店員というのは、青や紫を基調とした、ねるねるねるねの製作過程のような色合いの服を着ているものだと認識している、と思っていま調べてみたがそんなことはなかった。グレー系だ。当時は青系だった可能性もあるが。
さて、偉そうな女性店員が出てきて、我々のところにツカツカと歩いてきて、
「自転車でのドライブスルーのご利用はできません」といったようなことを言った。
悔しさと恥ずかしさ、やや怒り、といった感情を私は抱いた。
当時の私には、自転車は車だという認識があった。
そういう話をテレビか何かで聞いたことがあったからだ。
ゆえに、ドライブスルーを利用する権利はおおよそ持ち合わせているものだと思っていた。
しかし、それは誤りだったらしい。
シュンとした気持ちで駐輪場に向かい、自転車を置いた。
あって然るべき駐輪場なんだな、と思いながら店内に入り、注文をした。
サンデーのストロベリー味を食べながら、ドライブスルーにはマイクだけでなくカメラも設置されているんだな、と思った。
関野くんはサンデーではない何かを買っていた。
違うものを食べている、と感じた。
自転車は軽車両であるという交通法的知識は今でこそあるが、だからといってドライブスルーを利用する権利を主張できるかどうかはわからない。
ただ、マクドナルドではダメらしい、というだけだ。