2021年6月4日 パンの見えざる手

19時過ぎ、私は目が疲れて横になっていた。このまましばらく目を閉じて休んでいたかったが、もしここでグッスリ寝てしまったら夜ご飯のタイミングを逃すことになる。今絶対に何かを食べなくてはいけない。でも目は開けたくない。

目を閉じたままフレンチトーストを作ることにした。

まぶたに力を込めながらベッドから起き、台所に向かう。なにかビニールのようなものを踏んだがとりあえず進むしかない。
ちなみにこのとき私はBluetoothイヤホンを着けてラジオを聴いていたので、聴覚に頼ることもできない。

まずボウルと泡立て器を出す。いずれも洗ったばかりなので適当にガチャガチャ触って探した。
次に冷蔵庫から卵と牛乳を取り出す。卵は新しいパックを開けたばかりなので、手が滑ったら大事故になる。緊張しながらそれぞれを安定したところに置き、まず卵を割ってボウルに入れる。もしここで殻が混入していても私には分からない。これまでの人生で培った己の卵割り技術を信じるしかないのだ。

卵を入れたら、牛乳より先に砂糖を入れる。砂糖入れをコンロの下から取り出し、中にある匙1杯ぶんの砂糖をボウルに入れ、泡立て器で混ぜる。牛乳を入れてから混ぜると余計にしぶきが飛ぶので、ここで混ぜてしまうのがよい。
最後に牛乳だ。いつも量は測らず牛乳パックから適当に注いでいるので、今回もその勘を信じる。1番怖いのはボウル以外のところにダバダバこぼしてしまうことだが、大丈夫だったようだ。軽く混ぜる。

次に冷蔵庫の上の食パンを取る。この食パンの消費期限は昨日だったので、早く食べなければいけない。だからわざわざ夜にフレンチトーストを作っているのだ。普通フレンチトーストは朝か昼に食べるものだからな。
食パンを1枚ボウルに入れる。フライ返しを取り、一度ひっくり返して両面を卵液に浸す。

フライパンを用意し、勘でコンロの中央っぽいところに置く。次はバターだ。冷蔵庫の上段にあるバターを取り、バターナイフで適当に切ってフライパンに入れる。私の好みとしてバターはそんなに要らないのだが、今回ばかりは調整ができず、どのくらい使ったか全くわからなかった。

火をつける。ここでどうしても音が聞きたくなり、片耳のイヤホンを外した。一気に情報量が増え、やりやすくなった。バターが適当な音を出し始めたので、そろそろ卵液に浸したパンを焼く。

充分に卵液を吸ったであろうパンをフライ返しですくおうとした。しかし、すくえない。卵液を吸って重くなった食パンはボウルの底に張りついていたのだ。
普通に見えていれば、パンと底の間にフライ返しを滑りこませることができるのだろうが、不思議とこれができない。具体的には、食パンが板状であることをキープできているのか不安で、もしかしたらどこか一辺が変に押されて折り畳まれてるんじゃないかと疑ってしまい、手が進まなくなるのだ!
だから素手をボウルに突っ込み、食パンを直接掴んでフライパンに入れた。懸念通り食パンは折り畳まれてしまっていたが、素手で掴んだことにより綺麗な状態に戻して焼き始めることができた。

音を聞きながらひっくり返すタイミングを伺う。もうそろそろだろうという時を迎え、パンの下にフライ返しを滑り込ませた。そしてひっくり返そうとした瞬間!
これはもう本能的な反射なのかもしれないが、無意識に目が開いてしまったのだ。

すると眼前にはフレンチトーストがあった。なんかとてもビックリした。

まあここまでできればミッションクリアだろうということで、目を開けながら皿の用意などをした。

食パンは残り2枚あり、全てフレンチトーストにするつもりだった。それを考えると卵液の量はちょうどいい。牛乳が多すぎるということもなかった。
今回の反省点を挙げるとすれば、バターの量がおそらく多くなっていたことか。

できたフレンチトーストはうまかったです。皆さんもお試しあれ。

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