大腸内視鏡はじめて日記

〜あらすじ〜
ひょんなことから大腸の内視鏡検査を受けることになった鬼谷は、腸を空っぽにするために薄味で少ない食べ物を食べていた……。


検査当日。9時に起床。
15時からの検査までに腸を完全にきれいにするため、食事の禁止はもちろん、起床直後から下剤の服用が義務付けられていた。

液体の下剤「サルプレップ」を使った。これをコップに120ml注いで10分かけて飲み、次に240mlの水(サルプレップの倍量)を20分かけて飲む。これを6回〜8回繰り返す。つまり3時間〜4時間、ちみちみと液体を飲み続けるだけの時間を過ごす。
その間ひたすら便意が催される。最初はゆるい便が出るが、やがてほぼ液体のものしか出なくなる。尻から出る尿みたいなものだ。しかも勢いがすごい。水圧でコピー用紙を切れそうだと感じた。
その尿みたいなものにも最初は便のカスが含まれていたのだが、3時間経ったころにようやく完全に透明の状態になった。これで検査を受けられるコンディションが整ったらしい。

あとはひたすら、検査が終わるまで空腹との戦いである。
なんせ前日は少量の流動食しか食べられず、最後の食事からは18時間経っている。

正直、お腹が空きすぎてフラついていた。病院まで電車で行こうと思っていたが、ホームで転んだら死ぬと思ったので逆に自転車に乗っていくことにした。今思えば「逆に自転車」ってなんなんだろう。結果的に事故はなかったが、当時はその程度の思考しかできない状態だった。(病院からは「鎮静剤を使って頭をぼんやりさせるので、帰路の安全のため車や自転車では来ないでください」と言われていたが、それに関しては「帰りは乗らずに押していけば法的に歩行者扱いだから問題なし」と判断した)

結局、なんとか倒れずに病院まで辿り着いた。

促されるままに専用のパンツへ履き替え、横になる。
点滴や血圧測定の装置を取り付けられると、看護師が「お尻失礼します」と言って、専用パンツを縦に縫合している1本の糸を抜いた。これで丸出しスタンバイ状態である。

その後点滴の管から鎮静剤を投与され、「少しぼんやりしますよ〜」「先生が来ますよ〜」という看護師の言葉を最後に、私は眠った。先生が来たのは認識していないので、たぶんめちゃくちゃ早く寝落ちたんだと思う。寝ない人もいるらしい。

眠りながらも痛みを感じることは2回ぐらいあった気がするが、つらさは無かった。意識が戻った時にはすべて終わっていた。

意識が戻ったとは言えぼんやりしているので、起こしてくれた看護師に「僕寝ぼけて変なこと言ってませんでしたか」とか言って、再び寝てしまった。これがまさに寝ぼけた発言だった。

再度目を覚まし、さっきより少しはっきりした意識で「僕さっき『僕寝ぼけて変なこと言ってませんでしたか』とか言ってましたね」と、無駄に複雑な確認をして看護師を苦笑させた。この時点で検査終了から30分ほど経っていたらしい。

検査自体は20分ほどで終わったという。
この検査の目的は「腸で炎症が起きていないかを確認すること」だったが、20分しか経っていないなら問題なくサクサク進んだのかなと感じた。少し安心しながら看護師の案内を聞く。

看護師「この後は着替えていただいて、診察室で先生から今日の検査についてお話しいただきます。あとポリープを3つ切除したので、安静のためにここから3食分はこちらからお渡しするものを食べてもらいます。その後しばらくは刺激物やアルコールを控えて、消化の良いものを食べてください」

ポリープ? 3つ?

まったく想定していなかった。ポリープってのはおじさんの体にできるものじゃないのか。私は25歳だぞ。あ、でももう切除したのか。じゃあよかった。よかったのか? そもそもポリープってなんだ? 死ぬのか?

ポリープに気を取られたが、食事の制限が延長されたのもやばい。
私はもう空腹の限界で、この土日を使って死ぬほど飲み食いしてやろうと思っていたのだが、その計画が破綻してしまった。いや、やろうと思えばできるのだが、無理をしたら本当に死ぬ可能性がある。本当に死ぬまで食べたいわけではない。

先生の話を聞くと、ポリープは小さめのもので悪性の可能性は低く、改めて詳細な検査の結果を待つことにはなるが一旦大丈夫だろうとのことだった。しかしポリープがあるというのは先生にとっても想定外で、この機会に気づけてよかったねということでもあった。ラッキーっちゃラッキーである。
そして今回の結果によりポリープができやすい体ということが判明したので、2年に1回は同様の検査をすることになった。だるいが仕方ない。

とりあえず通院と薬の服用は今後も続きそうだ。

問題の食べ物。大腸検査後食「ケアミール」とある。
検査前に食べた「クリアスルー」よりはだいぶ食べ物らしい名前で信頼できる。ケアミールの製造はハウスグループだ。

3食分と、間食用のウエハースとゼリーがある。

順番通りに食べた方がいいと看護師が話していたので、今晩はコーンポタージュを飲む。

24時間絶食したのちの夕飯がこれだけだという。これだけで夜を明かすのはさすがに無理だと思ったが、とにかくすぐに腹を満たしたいので、後のことを考えるのはやめてとりあえず飲んだ。

これが、今までに飲んだスープの中で一番美味かった。

理屈なしに一番美味いと感じた。この感動はすごかった。

栄養不足でまともに働かない頭に「ミシュラン……」というフレーズを浮かばせながら、一心不乱にすする。甘い、しょっぱい、うまい。
ウミガメのスープもこんな感じだったんだと思う。私の場合、「男は、思い出の味だというハウス食品のコーンスープを飲み、その後下剤を飲んだ。なぜ?」という問題になる。

そんなめちゃうまスープだが、やはり量は全然足りなかった。

だから早速間食用のウエハースを開けた。一瞬で食べた。

あと、

帰り道にスーパーで買った団子も食べた。
もう普通に我慢できなかった。

レンジで温めて食べたら、全く別物の食感になってすごかった。ふわふわになる。是非試してみてほしい。

団子を食べても即死しないことがわかったので、明日はもっと色々なものを食べてしまう気がする。「アルコールさえ避ければいい」という気持ちになってしまっている。

これはもう、仕方ない。
お腹が空いたら食べるしかない。

そういえば、ポリープがあったせいでトータル3万円が消えていった。勘弁してほしい。

タイトルとURLをコピーしました