歩くときは左右の脚を交互に繰り出し続けるわけだが、私はそのルーティーンに失敗することがある。
具体的に言うと、私はいつもこの動作を「無意識」というものに頼って実行しているが、その「無意識」が突然に停止して、意識的に右脚左脚を繰り出さなくてはいけなくなることがある、ということだ。
その切り替えをスムーズに行うのは難しく、いつも1秒程度フリーズしてしまう。
軽い腿上げのような状態で固まってしまったのち、上げられたその足を適切な場所へ意識的に下ろすことでやっと歩行が再開されるのだ。
数歩歩けば「無意識」は復活する。
これは高校の頃に自覚した自分のクセで、初めて気づいたのは体育で50m走のタイムを測っていたときだった。
ヨーイドンの合図で私はがむしゃらに走り出していた。
すると、30mを過ぎたあたりで両脚の操業が突然スピードを落とし(ここで「無意識」がエラーを起こした)、同時に「次はどっちの脚を出せばいいんだっけ?」という感覚で頭の中がいっぱいになり、適当に判断して走行を再開した。
そんなわけだからタイムもよろしくなく、もともと脚が遅いのに増して不可思議なロスが付与された記録は、標準レベルで運動ができる友人達を驚かせた。
ちなみに翌年の計測でこのクセは顕れず、エラー発生時の記録より1秒速いタイムを出すことができた。
それでやっと下位30%ぐらいのタイムだったので情けなく感じたりもしたが。
「無意識」のエラーについて語ったが、それでも私は不自由せず生活できている(と思う)ので全然いい。
怖いのは、心臓がこのエラーを起こすことだ。洞房結節が常に心臓を動かしてくれていると生物基礎で習ったものの、そこでエラーが発生したら……と書いたところで自分に不整脈があることを思い出した。
私は、心臓に関しても「無意識」がエラーを起こす体質だったのだ。
そう気づいてしまうと、むしろ腑に落ちた。
一貫性があるじゃないか。
まあ実際、五臓六腑や細胞のあれこれが勝手に機能してくれているのはかなり楽でありがたいことだ。