豚は泣いている! 「野菜の豚肉巻き」か、「豚の野菜巻き」か。

私は料理をするが、クックパッドを使わない。見知らぬ誰かが投稿したレシピを信じることができないからだ。

では料理のレシピを調べる時にどういう手段をとるかというと、調味料メーカーの公式サイトを見る。味の素やキッコーマンのものを見ることが多い。

スクリーンショット 2020-09-30 22.59.20

レシピ大百科 – 味の素

味の素やキッコーマンは会社である。会社というのは個人より責任が大きいだろう。だから会社が公開しているレシピはそれなりに信じることができる。数もたくさんあるので、適当な食材名を検索ボックスに打ち込んで出てきたレシピを眺めているだけでも料理への想像力が刺激されていくのだ。

ある日、そんな感じで味の素のレシピをザッピングしていたら興味深いものを見つけた。

スクリーンショット 2020-09-30 23.37.17

野菜の豚肉巻きhttps://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/707095/

そして

スクリーンショット 2020-09-30 23.37.54

豚の野菜巻きhttps://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/705060/

これらはほぼ同じ見た目の料理でありながら別物として扱われている。レシピを見るとたしかに味付けは異なるのだが、ここで注目したいのはその名前だ。

巻き記事スライドワイド.002

見た目は同じで、名前には味付けを表すような単語もなく、ただ豚と野菜の立場が逆転している。これはどういうことなのだろうか。

これらの料理名と文法的に似た構成である「サバの味噌煮」を例に挙げて考えてみる。サバの味噌煮は、サバを食べる料理である。
「今日のご飯はサバの味噌煮ですよ〜」と言われて「わ〜い!味噌!」と反応する人はいないだろう。どちらかといえば「わ〜い!サバ!」が普通だ。つまり、「〇〇の〜」という料理名においては「〇〇」にあたる食材がその料理の主役であると考えていいのではないか。

巻き記事スライド標準.004

これを踏まえて先ほどの2つの料理名を見ると、こうなる。

巻き記事スライドワイド.005

初見では理解できなかった違いだったが、実は「何をメインで食べようとしているか」というところに差異が出ていたわけだ。味付けもきっとそこを意識して分けているのだろう。

このような、食材を豚肉の薄切りで巻く料理のレシピは結構ある。では実際、豚肉を使った「巻きレシピ」において、豚肉と中身はどれほどの割合で主役の座を奪い合っているのであろうか。味の素キッコーマンキユーピーの公式レシピサイトを対象に比べてみた。結果は以下の通りである。

巻き記事スライド標準.002

なんと見事に豚肉の惨敗であった。私が最初に目をつけた味の素ではまだなんとか居場所を持たせてもらっていたが、キユーピーでは容赦がない。徹底した「〇〇の豚肉巻き」主義である。さすがドレッシングで財を成す企業、肉よりも絶対に野菜が偉いという主張だろうか。この世界に来てしまうと豚は野菜様をお巻きするための道具でしかない。

思えば味の素の「豚の野菜巻き」は、豚肉が珍しく主役を与えられているだけにどこか張り切っていたような気がしてきた。

スクリーンショット 2020-09-30 23.37.54

なんだか輝いている。みんなで夕陽に向かって走り出しそうだ。

一方、主役の座を野菜に奪われた「野菜の豚肉巻き」はどうか。

スクリーンショット 2020-09-30 23.37.17

やさぐれており、チームワークを感じない。全員が違う方向を向いているじゃないか。主役の野菜様をお巻きしている立場でこの無気力な態度、キユーピーに見られたらどうなると思ってるんだ。

とはいえ、巻きレシピ界において豚肉が不公平な待遇を受けていることには違いない。豚肉をやさぐれさせてしまったのは我々人類の責任である。皆さんも、どうか考え直してみてほしい。「豚肉は巻いて当たり前」「せいぜい野菜様に失礼のないようにな」などと知らず知らずのうちに豚肉を虐げてしまってはいないだろうか。巻きレシピに上下無し。それぞれの食材に対して平等に光を当てるべきだ

では最後に、野菜を巻きつつも第一線に立とうとする豚肉たちをターゲットとしたキャッチコピーを掲げ、私なりの激励とさせていただきます。

巻き記事スライドワイド.006

タイトルとURLをコピーしました