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無印良品の「火鍋」がうまい

火鍋を食べてみたいと、ずっと前から思っていた。

私は火鍋を食べたことがない。その暴力的な名前にただ憧れを抱いていた。キムチ鍋にはキムチが入っているが、火鍋には火が入っているわけではないだろう。比喩だ。しかし比喩により「火」だけになってしまう鍋というのは、なかなかのものではないだろうか。味に関して「辛いのかな」ということ以外は想像できないものの、とにかく食べてみたいと思い続けていたのだ。

そしたら無印良品にこんなものがあった。

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火鍋の素である。税込290円。購入した。
まさかこんな形で念願の火鍋と出会うとは思っていなかった。

買ったからには食べる。

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春菊、ニラ、ネギ、白菜、えのき、しめじ、豆腐、豚モモ、鶏団子。

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結論。

うますぎる!!!!!!

うますぎる!!!!!!

もう一発。

うますぎる!!!!!!

市販されている鍋の素で一番美味い。美味すぎて笑顔になっていたと思う。私はかつてバイト先の副支配人に「君、笑ったことある?」と言われたことがあるが、火鍋を食べているときの私を見せてやりたい。実に美味い。

それにしてもなんでこんなに美味しいのかよと思ったら、その答えとなる材料がパッケージに買いてあった。

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花椒と八角!
たしかに唇がビリビリしていて、これがまた気持ちよかった。うま気持ちいい。美味しさで口がおかしくなったのかと思ったが、花椒のしわざだった。すごく豪勢な量が入ってるんじゃないかと思う。花椒の風味とビリビリを楽しむコツとしては、一度に入れる具の量を控えめにして、つゆの対流を止めないことだと感じた。カセットコンロなどでぐつぐつとやりながら具に花椒が絡み続けるようにするといいだろう。
私はこれまで八角というものを意識して食事をしたことがなかったのでその味的作用はよくわからないものの、無印の商品ページにあるレビューを見ると「八角の味が強い」みたいなことを言っている人がいたので、ちゃんと存在感を示しているらしい。火鍋に対する私の感動の何割を八角が支えているのかはわからないが、八角のことが好きになった。

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唐辛子がまるまる一本入っているというお楽しみ要素もある。だからといって辛すぎるということもなく、楽に美味しく食べ続けられる。ほんとうに美味しい商品だ。

鍋という料理は楽だし美味しいので、私は冬になるともっぱら鍋を食べている。味付けは味噌とキムチでキムチ鍋にしたり、市販の素を使う場合は『鍋キューブ』など安めで少量から使えるものを買うことが多い。1人暮らしであるため、多人数向けの使い切りタイプは贅沢品という認識でいる。
そういう点では今回の火鍋は、明らかに贅沢品の領域にある。だから実は、この商品は「誕生日特典でもらえるポイント」を使って購入した。誕生月に無印のアプリ会員になり500円相当のポイントを頂戴することで、普段は買いづらい格の食料品をゲットしたのだ。
しかしどうだ、食べてみたらこの有様。私は味の虜になった。

結果、こういうことになる。

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10個買った。
一切の後悔はない。なんならこれでも足りないかと思ったほどだ。私には元来こういう思い切りの良さがあるといえばあるのだが、一度にこれほどの数を買ったことにはまた別の理由もある。

実はこの火鍋、もう今シーズンの生産が終了しているのである。つまり、現在店頭に並んでいるものを手に入れるしかないのだ。
このことは無印の店員から直接聞いて知った。
最初にこの商品を買った店でもう一度買おうとしたら同じ場所になかったため、店員に「火鍋の在庫はありますか?」と尋ねたら「当店では売り切れていて、生産も終了しているので入荷予定はありません」と言われた。結果、店頭に在庫がある他店舗から取り寄せることとなり、購入数を訊かれ、とっさに「10個ください」と言ったのだ。ついでに「とても美味しかったです」ということも伝えた。まあその気持ちは何よりも注文数が物語っていただろうけど。

とにかく、いまこの文章を読んで興味を持った方には早めの行動を求める。行動といっても「今すぐ最寄りの無印へGO!」というわけではない。商品ページを見れば、まだ在庫が残っている店舗が一覧で表示されている。

手づくり鍋の素 火鍋 200g(2~3人前) 通販 | 無印良品

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「店舗在庫状況」の中に各位が行きやすい店舗の名前があれば幸いだ。ただ、ここで「在庫あり」と書かれていても実店舗に商品があるとは限らない。まずは電話をしてみよう。電話さえ繋がれば取り置きなどの手配ができるはずだ。
もし店舗一覧に近くの店がないときでも、すぐに諦める必要はない。行きやすい店舗の電話番号を調べて電話してみよう。今回の私の場合のように他店舗からの取り寄せが可能な場合もある。
店員には手間をかけさせてしまうことになるが、店員の使命は「あなたに火鍋を食べてもらうこと」だ。あなたの火鍋に対する興味があってこそ無印良品の経営は成り立っている。遠慮をする必要はない。

もう2月になるが寒さは続く。
あなたの越冬に、無印良品の火鍋は一役買うはずだ。
食べよう。290円は安い。

私からの誘導は以上だ。健闘を祈る。

最後に、無印良品および無印良品の店員さんへ。
『手づくり鍋の素 火鍋』を作ってくれてありがとうございます。店員さん方、取り寄せと取り置きの手配をしてくれてありがとうございました。おかげで火鍋を食べることができました。とても美味しかったです。ぜひまた来シーズンも火鍋を発売してください。楽しみにしています。

もしも『コクリコ坂から』の登場人物がインドでメシを作っていたら

「モーニングルーティーン」

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「インドの神様、今日もよろしくお願いします」

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「おっ、今日も信号旗があがってるね」

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(ナマ)
(ステ)

「朝の一仕事」

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「朝メシの時間だよ〜!」

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「一皿70ルピーだよ〜!」

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「食の細いおばあさんにはラッシーをどうぞ」

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「「「「「「〜〜〜♪(インドのいただきます)」」」」」」

「世界の食文化」

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「……であるからして、食文化のさらなる発展のためには海外に目を向けるべきなのだ!」

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「そこで私は、コロッケという料理に注目している! 潰したジャガイモを衣で包んで揚げたものらしい!」

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「はははは! 何がコロッケだ! それはサモサのことではないか!」

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「…………」

「違うのか!?」

サモサは、インド料理の軽食のひとつ。
具材には、ジャガイモ、タマネギ、エンドウ豆、レンズ豆や、羊の挽き肉が加えられ、ゆでてつぶした具をクミンやコリアンダーシード、ターメリックなど各種の香辛料で味付けし、小麦粉と食塩と水で作った薄い皮で三角形(三角錐が多い)に包み、食用油でさっくりと揚げたもの。(サモサ-Wikipedia)

「きっとナンのカスみたいなものだろう」

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「さっきは恥をかかせてすまなかった。貴様コロッケに興味があるのか?」

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「ああ、俺は生粋のサモサっ食いだ。コロッケも食べてみたい」

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「サモサと一緒にされては困る。コロッケは、衣がパン粉らしいからな」

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「パン粉って何だ?」

「似たもの同士」

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「君の料理の腕を借りたい」
「沐浴しながら言いなさんな」

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「潰したジャガイモを衣で包んで揚げてくれ」

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「……サモサのこと?」
「サモサと違ってパン粉というのを使うらしい」

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「……パン粉って何?」
「君には俺と同じ血が流れているかもしれないな」

「試作品」

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「試しに俺なりのコロッケを作ってみた。食って参考にしてくれ」
「〜〜〜♪(インドのいただきます)」

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「サクサクして美味しい! でも……」
「でも……?」

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「(でも……)」
「(でも……?)」

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「味が薄いわ」
「味が薄い!?」

「本場の味」

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味の薄さに不満を抱いた一行は、コロッケの本場である日本を訪ねた。

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「「「コロッケは、味が薄すぎやしませんか!」」」

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「ああ、そりゃ君たち、ソースをかけていないんだろう」

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「「「ソース!?」」」

「灯台下暗し」

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「君たちはソースを知らないのか? 調味料だよ。茶色くて、甘かったりしょっぱかったりする……」

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「失礼ですが閣下、それはカレーのことでしょうか」

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「はっはっは! 違う。ソースとは、野菜や果物を煮詰めたものだよ。ウスターとか中濃とかがあって……」

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「「「(チャツネのことだったか……)」」」

Q.チャツネとは何ですか。
A.野菜や果物に香辛料を加えて漬けたり、煮込んだりして作った調味料です。 (ハウス食品HP

「凱旋」

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インドに帰った一行は日本での学びをもとにコロッケを完成させると、またたく間に大人気商品となった。

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「砕いたナンを衣にするとは考えたわね〜。チャツネも美味しいわ。」
「おいしー! 僕好きだよこのサモサ!」

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「とても美味しいサモサであります!」

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「初めてサモサを食べました。ごちそうさん」

「若き料理人たち」

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〽︎あなたは谷を去りゆく 優しい笑みを残し

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〽︎二人たどった道を 朝日の中一人

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(汽笛)

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「「(もっと美味しいサモサを作ろう……!)」」

(完)

画像提供:スタジオジブリ

豚は泣いている! 「野菜の豚肉巻き」か、「豚の野菜巻き」か。

私は料理をするが、クックパッドを使わない。見知らぬ誰かが投稿したレシピを信じることができないからだ。

では料理のレシピを調べる時にどういう手段をとるかというと、調味料メーカーの公式サイトを見る。味の素やキッコーマンのものを見ることが多い。

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レシピ大百科 – 味の素

味の素やキッコーマンは会社である。会社というのは個人より責任が大きいだろう。だから会社が公開しているレシピはそれなりに信じることができる。数もたくさんあるので、適当な食材名を検索ボックスに打ち込んで出てきたレシピを眺めているだけでも料理への想像力が刺激されていくのだ。

ある日、そんな感じで味の素のレシピをザッピングしていたら興味深いものを見つけた。

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野菜の豚肉巻きhttps://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/707095/

そして

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豚の野菜巻きhttps://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/705060/

これらはほぼ同じ見た目の料理でありながら別物として扱われている。レシピを見るとたしかに味付けは異なるのだが、ここで注目したいのはその名前だ。

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見た目は同じで、名前には味付けを表すような単語もなく、ただ豚と野菜の立場が逆転している。これはどういうことなのだろうか。

これらの料理名と文法的に似た構成である「サバの味噌煮」を例に挙げて考えてみる。サバの味噌煮は、サバを食べる料理である。
「今日のご飯はサバの味噌煮ですよ〜」と言われて「わ〜い!味噌!」と反応する人はいないだろう。どちらかといえば「わ〜い!サバ!」が普通だ。つまり、「〇〇の〜」という料理名においては「〇〇」にあたる食材がその料理の主役であると考えていいのではないか。

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これを踏まえて先ほどの2つの料理名を見ると、こうなる。

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初見では理解できなかった違いだったが、実は「何をメインで食べようとしているか」というところに差異が出ていたわけだ。味付けもきっとそこを意識して分けているのだろう。

このような、食材を豚肉の薄切りで巻く料理のレシピは結構ある。では実際、豚肉を使った「巻きレシピ」において、豚肉と中身はどれほどの割合で主役の座を奪い合っているのであろうか。味の素キッコーマンキユーピーの公式レシピサイトを対象に比べてみた。結果は以下の通りである。

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なんと見事に豚肉の惨敗であった。私が最初に目をつけた味の素ではまだなんとか居場所を持たせてもらっていたが、キユーピーでは容赦がない。徹底した「〇〇の豚肉巻き」主義である。さすがドレッシングで財を成す企業、肉よりも絶対に野菜が偉いという主張だろうか。この世界に来てしまうと豚は野菜様をお巻きするための道具でしかない。

思えば味の素の「豚の野菜巻き」は、豚肉が珍しく主役を与えられているだけにどこか張り切っていたような気がしてきた。

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なんだか輝いている。みんなで夕陽に向かって走り出しそうだ。

一方、主役の座を野菜に奪われた「野菜の豚肉巻き」はどうか。

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やさぐれており、チームワークを感じない。全員が違う方向を向いているじゃないか。主役の野菜様をお巻きしている立場でこの無気力な態度、キユーピーに見られたらどうなると思ってるんだ。

とはいえ、巻きレシピ界において豚肉が不公平な待遇を受けていることには違いない。豚肉をやさぐれさせてしまったのは我々人類の責任である。皆さんも、どうか考え直してみてほしい。「豚肉は巻いて当たり前」「せいぜい野菜様に失礼のないようにな」などと知らず知らずのうちに豚肉を虐げてしまってはいないだろうか。巻きレシピに上下無し。それぞれの食材に対して平等に光を当てるべきだ

では最後に、野菜を巻きつつも第一線に立とうとする豚肉たちをターゲットとしたキャッチコピーを掲げ、私なりの激励とさせていただきます。

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豆を求めて

今日は節分だから豆を食べなくてはいけないのである!

これは豆ですか?

はい、これは豆です。

これは豆ですか?

いいえ、これは豆ではありません。

これは豆ですか?

はい、これは2皿目の豆です。

豆はどこですか?

これは豆ではありませんね。

どうでしょうか?

これも豆ではありませんか!

はい、これも豆です。

これは豆ではありませんね。

はい、これは豆ではありません。

これは豆ですね!

はい、豆ですね。節分にたくさん豆を食べられて、良いことです。