2022年12月24日 アリのように誘う

街はクリスマス色に染まっている。
今日は聖歌隊の合唱で起こされました。
空はトナカイが飛び交っており獣臭いです。

稀代の障害競走馬オジュウチョウサンが11歳で現役を引退した。ラストジャンプとなった本日の中山大障害は6着で無事完走。

私はこのレースの馬券を買わず、ただオジュウチョウサンの完走を祈ってテレビを見ていた。
そんな見方をしたことは今までに無い。

競馬に対する基本的なスタンスとして「走る馬はあくまで博打の駒である」という考えを持っている。だから特定の馬をかわいがって応援することもない。これはなんというか、動物を使ったギャンブルをやる者としてのけじめみたいなものだ。

しかしオジュウチョウサンは別格で、11歳という高齢までずっと第一線に立ってたくさんの記録を作ってきたし、何より最後も障害競走に挑むということで、せめてレース中にだけは死なないでくれという思いがあった。そういう危険を伴うのが障害競争だから。

レース中、障害の飛越などではどうしても衰えを感じざるを得なかったけど、中山コースを熟知した無駄のない進路取りや最終コーナーからの精一杯の加速などを見ていると、本当に優秀で一生懸命な馬だったんだなあという思いで胸が詰まった。無事に帰ってきてくれてよかった。人間本位の考え方だけど、ここまで頑張ってくれてありがとうと思う。お疲れ様でした。

なお「そんな危険性の高い障害競争を実施する意義はあるのか」という疑問もあるかもしれないが、それについてはまず競馬が存在している理由から理解しなければいけなくなるので、色々複雑なのだ。

さて、誰も興味のない競馬の話をしてしまったので、最後に私からのプレゼントとしてクリスマスとは無関係の小話をひとつ。

中学1年時、ソフトテニスの大会での出来事。
試合前に時間があったので、3年生の先輩と一緒に芝生に座りながら話していた。その先輩はすね毛が濃いことで有名で、先輩自身もそのことに誇りを持っていた。

私は会話の合間を見て「先輩、アリンコ作ってください」とリクエストした。アリンコとは、生えたままのすね毛を手のひらでくるくると捏ねて作る、昆虫のアリのような球体のことである。我々1年生は入部してすぐアリンコのことを教えてもらっていた。

先輩は「おっ、アリンコ作るか」と笑顔で答え、手際よくアリンコを生み出してくれた。アリンコはいつも同時に3,4個、すねの上に生まれる。

できたてのアリンコを見て、すげー、本当にアリみたいですね、などと盛り上がっていたその時。

先輩のすねに、1匹のアリがよじ登ってきた。
大きめのやつである。

我々は「アリンコが本物のアリを呼んだ!」と盛り上がった。アリは自分に似た何かが点在する茂みを訝しげに探索している。

その穏やかな奇跡をしばし楽しく観察していたところ、ふとアリの異変に気づいた。
動きが遅くなっているのである。

進路を阻む無数のすね毛に戸惑ったアリは、四方八方へ行ったり来たりを繰り返すが、そうするうちに先輩のカールしたすね毛がアリの関節の間に絡み始めていた。

アリはとにかく前に進もうとするし、絡みつくすね毛から解放されようと暴れもする。しかしそのようにあがけばあがくほど先輩のすね毛は深く食い込み、アリの動きを封じる。

アリの挙動はどんどんスローになり、最後は完全に止まった。

絶命したのだ。

以上、先輩が自らの体毛を罠として昆虫を仕留めた話でした。メリークリスマス。

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