「カエルっ!」と思って飛び退いてしまった石。
近所の定食屋でチキンカツカレーを食べた。
チキンカツカレーは本来この定食屋に無いメニューなのだが、カツカレーの食券を買って店員に渡す時に「チキンカツで」と言えばチキンカツカレーにしてくれる。私は店員との交渉によってその方法を開拓して以降、これしか注文していない。
この話、私の日記を毎日読んでくれている人は「もう分かってるよ」と思うかもしれないが、今日初めて読んでくれた人のためにあえて説明した。
じゃあ、これは初見の人にまでわざわざ伝えるべき情報なのかというと、そんな必要は全く無い。誰も知らなくていい。
いや違うか。
私は「この近所の定食屋でチキンカツカレーを食べたい」という一つの願望を実現した。そういった手段はあらかじめ用意されていなかったのに、だ。
上記の説明ではその成功事例を紹介している。
私の日記を見ていつか誰かが驚くだろう。
「メニューに無い料理でも、こちらのアイデアに合理性があれば提案を受理してもらえる可能性があるんだ!」と。
そして長年思い描いていた案を持ち込むのだ。
———マクドナルドにて
「いらっしゃいませ!店内ご利用ですか?お持ち帰りですか?」
「店内で。チーズバーガーひとつ」
「はい、チーズバーガーがおひとつ!」
「で、そのチーズバーガーなんですけど……」
「はい?」
「正方形のチーズをそのまま乗せるんじゃなく、一旦半分に折ってから、バーガーの片側に挟んだ状態でとろけさせてもらえませんか?」
「えっ、どうしてですか?」
「そうすれば、片側はチーズ多めの豪華なチーズバーガー、もう片側はシンプルなハンバーガーとなって味の変化が効き、より満足感が高くなると思うんです」
「な、なるほど……。承知しました」
「よろしくお願いします」
その注文はスタッフ内で話題となり、やがてマクドナルド本部へも報告された。
本部の会議でも
「たしかに美味そうだ」
「一度折るだけでこんなに夢が広がるのか」
などと絶賛の声が上がる一方、
「たった160円の商品でそこまでの満足感を与えていいのか」
「上のバンズが傾斜して不恰好にならないか」
といった反対意見も出た。
しかし総意としては紛れもなく賛成の一手。
翌月、「チーズ半バーガー」として正式に商品化されることとなった。
テレビCMには堺雅人を起用。
キャンペーンキャラクター・半バガ直樹の決め台詞「倍チーズだ!」が若者の心を掴む。
商品は瞬く間に一世風靡し、普通のハンバーガーが「全バーガー」と呼ばれてしまうほどの看板商品となった。
そんな革命の影には、私のチキンカツカレーがあったというわけだ。