2023年6月14日 なか卯でそばを食べる日

今日は初めてなか卯に行ってみた。

26歳にして初のなか卯。今まで行かなかった理由は特にないし、今日行くべき理由もない。ただ、行くことにした。静かに回り続けるコマをふと触りたくなったみたいなもんだ。

なか卯に向かう道中、富士そばの横を通った。「そば、いいな」と思った。これまでの私だったらそこで富士そばに吸い込まれていただろう。そしてカレーかつ丼と冷たいそばのセットを頼んでいたに違いない。

しかし今日はなか卯に行くのだ。それになか卯には、そばがあったはずだ。そうだ。じゃあなか卯でそばを食べよう。私のなか卯デビュー戦はそばで決まりだ。よしよし。

そうして完全にそばの口になった状態で、なか卯に着いた。店に着く前から何を食べるか決まっていると気分がいい。

注文は食券制だった。新商品として大きく表示されている「牛肉たっぷりつけそば」が目に入る。鴨せいろの牛肉バージョンみたいなものだ。私は鴨せいろも肉うどんも好きなので、これは絶対に好みのメニューだと確信し、発券した。加えて、なか卯の定番は親子丼だと認識していたのでミニ親子丼も注文した。

席につくと、店員が「お茶をどうぞ」と言って冷たいお茶をくれた。丁寧だなと思った。

やがて、同じ店員が私のテーブルに料理を運んできてくれた。

「牛肉入りのつけ汁うまそ〜」と思いながら、この写真を撮った。その直後に気づいた。

そばじゃなくてうどんじゃないか。

発券を間違えたかと思い、手元に残った食券を見るが、私は間違っていなかった。「牛肉つけそば」と書かれている。

じゃあ、店員側が間違えてるんだ……。

悩んだ。これを申告するかどうか。普段の外食だったらほぼ間違いなく申告せず、そのまま食べている。申告してそばを作り直してもらえるとしても、うどんが廃棄されてしまってはもったいないからだ。ていうかこれは実質肉うどんだから、本来喜んで食べるメニューである。

しかし今日は、あまりにもそばの気分になっていた。それに今日はわたしにとって初めてのなか卯でもあるのだ。26年半生きて、初めてのなか卯。

ずっと憧れだったミッキーマウスに会うためグリーティングの列に並び、いざ自分の順番を迎えて部屋に入ったらそこではドナルドダックが手を振っていました、みたいな戸惑いがあった。

箸を持ったままの状態で、数秒悩んだ。茹でられたうどんを廃棄させてまで我を通す必要はあるのか、片や、店に来る前から抱き続けた「そばが食べたい」というかけがえのない感情を尊重しなくていいのか。

結局、言った。

食券を渡しながら「すいません、そば頼んだんですけどうどん来ちゃってて……」と言った。だって私はそばが食べたかったから。それが全てだと思った。そばを食べたいんだからそばを食べる。それしかないのだ。飲食店では食欲に従うのが原理なのだ。

店員は「あ、すいませ〜ん!」と言い、パタパタと厨房に戻っていった。すると厨房からは「そばって書いてあるよ〜!やだも〜」という笑い声が聞こえてきた。明るい人たちでよかったと思った。

まもなく、そばが届いた。届いてからは写真を撮らずに食べ始めた。つけ汁が熱いうちに食べたいし、すぐ撮るのは嫌味っぽいかなと思って。

うまかった。やはり牛肉は温かいめんつゆに合う。親子丼はやけに黄身の色が濃くて満足感あった。

そばにしてもらってよかった。

そばを撮っていないことを途中で思い出し、撮った写真。

なか卯は店の雰囲気が良いように感じた。そう思わせてくれるのは店員さんの技量であり、飲食店としてのかなり重要な魅力だ。

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